<中国帰国者問題からの報告>
中国帰国者日本語教室の取り組みを通して-相互学習会-
はじめに
1973年、日中国交正常化以降、現在、横浜には、中国帰国者が約299世帯1156人在住している。
残留孤児とその家族、また二世、三世の人達は言葉や生活習慣の違いからくるさまざまな社会的なハンディキャップを抱えているが、
それらに大して行政施策、民間活動とも不充分な体制のまま受け入れは進んでいる。
横浜は中華街もあるために帰国者の数は多く、この問題にいち早く取り組んでいる。
今回は帰国者の現状と、本会帰国者事業の実践経過を報告し、今後の課題を整理したい。
横浜市内には現在国費による帰国者が約100世帯400人、自費による帰国者を含めると約300世帯1200人が在住している。
横浜市は全国でもかなり帰国者が集中している地域であるが、何故かというと、まず第一に帰国者は大都市に集中しやすいという状況がある。
というのも大都市であれば、就職先が見つかりやすいし、住宅や生活用品が手に入り易いからである。
また帰国者の大部分は中国に置いて農村部に生活しており、都市での生活に憧れを持っている者も多く、都市部での生活を希望する者が多いこ
とが挙げられる。
第二に中華街があるため、就職先が多いということからである。
このような状況の中で、帰国者は日本での生活に入っていくのであるが、そこには曲行くや生活習慣の違い、また法律的な問題など
多数の問題があり、移住者が多いほどその問題は横浜市に置いて大きな問題となったのである。
そこでまず最初に、中区社会福祉協議会とYMCAに依頼し、84年に「生活講座」が始められた。
これは帰国者に対し、日本ので生活習慣や日本語の講座を開くというものであった。
これが反響を呼び、中区だけでなく横浜市全域において行ってほしいとの要望から、85年中国帰国者定住を考える会が結成され、
今まで把握されていなかった帰国者の実態を把握し、翌86年には横浜市社協において中国帰国者ボランティア講座が開かれ、
職員とボランティアが一緒になってこの問題を考えていくこととなった。
ここで福祉事務所のケースワーカーや自立指導員、日本語教室の講師などが中心となって、
行政で取り組めない部分を横浜市社協で取り組んでいこうということが発案された。
そこで提案されたのが日本語教室開こうというものであった。
これまで帰国者自立研修センターで行われてきた日本語教育は、国費帰国者のみ対象であったため、
自費の帰国者に対する受け皿がなかったことから、対象の枠を限定しない教室の創設が要望された。
またまたこれまで対象者全てに一斉授業しようとしてきたために、その学歴や年齢の違いなどから、
それについていけずに目的を達しえなかった人達のために、その人の能力にあったマンツーマンの授業をしようということ、
そして最後に、これが一番重要なポイントであったのだが、この学習会を単なる日本語学習の場にするのではなく、
気軽にお茶を飲みながらでも会話できるような帰国者にとっての安らぎの空間、
そして教える側と教えられる側が共通理解を持つ部分により長い時間を費やせるような会にしようとうものであった。
これを「相互(フーシャン)学習会」と名づけ、ともに楽しく学ぶという趣旨で開かれることになった。
生徒十数名ほどでまた講師も十名程、横浜中華街の近くでそこに働きながら学べるような場所を選んだ。
このような会が存続できたのも、ひとつには福祉事務所のワーカーや自立指導員、日本語教室の先生など、
帰国者のニーズを肌で感じる専門家達の強力、そして当初この会の趣旨を把握し、実践していくことに時間を要したが、
中国語に趣味を持っているボランティアの結成というマンパワーがあったということ。
それから帰国者支援に理解を示し、場所を提供してくれたライオンズクラブの協力によるものである。
この会が2年目に入ったときには中国帰国者自立横浜支援会というボランティア団体が自主の会として運営していたのであるが、問題点も浮か
び上がってきた。
第一に生徒のいれかわりが激しいということ。様々な理由があるだろが、帰国者自身にとってもどのような取り組みをしなければならないのか、考
えねばならないということ。
第二にこのような活動をボランティアが行っていて果たして帰国者にどのような効果を与えているのだろうかという疑問がボランティア自身の中に
生まれてきた。
また、88年10月全社協の依頼によって中国帰国者調査研究委員会が設置され、専門機関による帰国者援助システムの問題点を明らかにして
いこうという動きが現れた。
研究委員として現場の職員、ボランティアがあたった。
ここで明らかにされた問題点として、第一に永住決定を行う際の帰国者に対するオリエンテーションが手薄であること。
第二に二定着促進センターと自立研修センターの連携がうまくいっていないこと。
とくに帰国者が就労する際に役立つ、企業での実地訓練を行っていないところが多いということもあげられる。
企業の研修によって、自分がやっていけるか否かが見極められるのではないだろうか。
第三に帰国者の問題に携わるボランティアが限界を感じていること。
専門家達の連携とボランティアの協力が必要とされていることがあげられた。
これらの帰国者に対する動きから考えなければいけないことは、まず自立とは何かということである。
帰国者の抱えている問題として日本語の習得が一番にあげられているが、果たして日本語を話せるようになるだけで良いのだろうか。
自分で生活する力をもつためには、会話だけでなく人間関係を持っていこうとする努力が必要なのではないか。
また日本で生活するためにその生活習慣を合わせることが自立につながるのかということ。
中国と日本で生活習慣が全く違うのは当然であり、帰国者が日本で礼儀しらずといわれることもしばしばある。
しかし日本の国際化を考える上で、ただ単に相手に日本の生活習慣を学ばせて受け入れるのではなく、
日本側も愛を理解し、その上で受け入れを考えていく姿勢が必要なのではないだろうか。
こういったことから、この報告のまとめとして、提起したいのは、異文化の人達に対して、
人間関係をつくっていこうという意欲を持ってもらうことが必要なのではないだろうかということである。
そしてまた自分達もこれを受け入れていこうという意欲をもつことが重要となってくるのではないだろうか。