老人福祉センター売店を中心とした
障がいの早期就労体験の場づくりを通して



1, ジョブコーチプラス1を設立した動機

 私自身の経験から、知的障がい者にはサポーターの必要性があることを強く感じていたことが、この会を作るきっかけとなっています。

 現在24歳の息子は養護学校卒業時に「一般企業での就職は難しい」との判定を受けました。しかし、私はわが子に「社会に適用するかチャレンジさせたい」と自らあちこちを訪ね、横浜市内での生協で商品陳列や野菜の計量などの仕事を見つけました

 喜んで通勤していた息子が変わり始めたのは1年程経った頃で、お店から「ちょっと注意するとトイレにこもってしまう」という連絡を受け、何度も買物をしながら様子を見に行ったり、息子に尋ねたりしましたが息子の口が堅かったこともあり、原因ははっきりしませんでした。悩んだ末、大学生をアルバイトで雇い、付き添いを頼みました。彼と一緒に仕事をしてもらっているうちに、息子は落ち着きを取り戻し、また明るい表情で毎日職場に通うようになりました。
 学生さんの話で「大丈夫○○クンならできる、できる」と雇ってくれたリーダーが代わったことが閉じこもりの原因だと分かりました。このことをきっかけに職場で親に代わって気持ちを伝えたり、人間関係を仲介したりしてくれる人が居たらと思うようになりました。

 この会を設立することに並行して、この会の仲間達と学習会を組み立てて、一般の方にも障がい者の就職状況の理解を呼びかけようと構想を練っているとき(平成9年)に青葉区社会福祉協議会より「老人福祉センターで売店を運営してみないか」とお話がありました

 それまで私は社会福祉協議会とは縁がなく、他の仲間達とリサイクルショップをやりながた障がい者の働く街づくりを考え抵抗と思っていました。

 24年前に障がいをもって生まれた息子を抱えながらずっと地域に働きかけていたことは、障がいを持った子供が当たり前に地元の学校に通い、学び、働き、暮らすことを実現することでした。だからいつも会う人ごとに「こうすれば○○ができるでしょう」と説明し続けました。でも「障がい児は○○ができない、しない」等の偏見は口で説明するだけでは解けるものではありませんでしたので、それならば社会福祉協議会の話を受けて、彼らの働いている姿を大勢の方に見てもらおうと決心しました。



2, ジョブコーチプラス1 概要

1)発足
1997年10月、障がい児・者が生まれ育ったこの街で元気に暮らし、社会の一員として自立するために、働くことをサポートするということを目的に市民が立ち上げ、青葉区社会福祉協議会の協力により「ジョブコーチプラス1」が発足した

2)目的
◎障がい児・者の働く場所を提供する
◎働くことに関する学習活動を行う
◎働くことに対する社息への働きかけをする

3)組織
@事務所を青葉区社会福祉協議会に置く
A会の活動に関心があり、会員として自覚を持って行動できる任意加入した会員で恒星し、年1回は全体会を開催する
B会員より運営委員(10名以上)を選出し、運営会議を開催する。人気は1年とする。但し、再任は妨げない

4)活動
@老人福祉センター・ユートピア青葉の売店「であいの店プラスワン」を運営し、働く体験の場を提供すると同時に、ショップパートナーと実習生の募集・実習を行う
A働く体験の場を発掘する
B情報交換、学習会、見学会などの場をつくる
C全体会、運営会議、メンバー会議を開催する

5)ジョブパートナーについて
@仕事の内容は、障がい児・者の働く体験の場での実習をサポートする
A資格は問わない。但し、会が設定するオリエンテーションと売店実習終了後にパートナーを開始する

6)運営会議について
@月1回開催する
A運営委員、社協担当者、すべての会員が出席できる
B活動報告を行い、反省点・問題点を話し合う
C会の運営・活動内容などについて話し合い、取り決める

7)会費
@年1000円とし、会の運営、活動費にあてる。また、特別な行事の際に参加費用として必要な場合、別途徴収する場合もある
A賛助会員制度(年間1口1000円)もある



3, ジョブコーチプラス1組織図



ジョブコートプラス1運営会議
→全体の運営に関する取り決め、連絡、調整などを行う
  構成は代表(1)事務担当(2)会計(1)社協せあいのお店プラスワンから店長(1)副店長(1)会計(1)パートナーの各班から担当者(各1名以上)その他運営に関心のある会員の方すべて参加可

であいのお店プラスワン
→障がい児・者の実習の場として区社協よちいたくされた売店の運営、仕入れ、定員のシフト、実習生のジョブパートナーなどを行う

パートナー
→学習会やジョブパートナーの研究会などの企画・実施、職場開拓、売店外の実習の窓口・コーデュネートなどを行う



4, 活動内容

@であいのお店プラスワンの営業

 田園町線の藤が丘駅から徒歩10分、もえぎ野にある老人福祉センターの一角で「であいのお店プラスワン」と名づけた売店を地域の人、PTA関係、生協関係など色々な仲間に声をかけて協力してもらい、営業を始めてから今年で丸4年になります

 売店は10時〜16時の営業で、主にお昼のお弁当、飲み物、とれたて野菜などを販売しています。店員12名障がい児(以下実習生の呼ぶ)・12名の売店チーム・14名のジョブパートナーを毎月うまくコーデュネートをして、それぞれが1日店長となりながら営業を続けています。特に土曜日はコーヒーサービスをしていますので、実習生が好んで入りたがる曜日でもあります。

 実習生は他人とのコミュニケーションが苦手で売店の店員など嫌いな職種の1つかと思っていましたが、売店のレジスターの操作がどの子も大変興味がアリ進んで売店の仕事に入ります。売店では「いらっしゃいませ、ありがとうございました」など、大きな声ですることを心掛けています。

 老人福祉センターで働くスタッフさんたちは、新しい来館者の館内説明時に必ず売店に立ち寄って売店の営業目的をみなさんに話し利用をよびかけたり、仕事の前にコーヒーを飲んで実習生に声がけをしてくれたり、いつも売店を気にかけてていてくれます

 そんなこんなで売店は商品の販売だけでなく、お客さんの相談に乗ったり、グチの聞き役になったり元気づけたり・・・いろいろおもしろい出会いは毎日いっぱいの働く場です。

A老人福祉センター館外清掃と植栽作業下請け


・毎年1回、等仁福祉センターの外周を実習生とジョブパートナーやグループうとなり、草むしりや清掃をします。

・年2回(5月、11月)職人さんによる館外の   作業の下請け作業として、切り枝運びや清掃作業をします。

◎清掃作業は軍手をのはめかた、ホウキの持ち方、掃くときのの姿勢など基本的な事からのスタートです。1対1でジョブパートナーに細かい手ほどきを受けながら働いています。毎月1回ですが、年間を通して実習を重ねていると、なんとか様になってくるものですね。

Bチラシくばりばど不定期な仕事


・配布エリアの地図とチラシを持ち、ジョブパートナーとペアになって、ていねいで確実な配布を目指しています。

C夏休み体験実習


 平成12年、13年と2年続けて夏休み期間に「働くことを体験してみませんか」と、青葉区社会福祉協議会とともに青葉区および青葉区周辺に在住・在学の障がいをもつ中高生にむけて呼びかけました。特に今年度は養護学校にチラシを配布したことで8名の参加者があり、「働く体験」をしました。働く体験を通して働くことの厳しさ、楽しさ、喜びを実感し、社会の一員として自立するための一歩となればと思います

平成13年
・夏休み43日中(7/20〜8/31)売店営業日数 34日
・実習生・体験実習生利用日数 29日
・夏休み期間中売店利用実習生のべ人数 36人
・    〃    〃    パートナーのべ人数 28人
・    〃    売店1日半日店員のべ人数 65人



Dボランティア講座

 平成13年3月〜4月にかけて「ジョブパートナーを体験しよう!」と市民に呼びかけてボランティア講座を青葉区社会福祉協議会と開催しました。

 「”働きたい”気持ちを生かすためには」との題目で講師の方にボランティア入門のい部分を方っていただいてから@オリエンテーションA体験B体験報告と、それぞれ日数を変えて参加してもらいました

 参加者10名(男性6名、女性4名)の内、現在もジョブコーチプラス1に籍を置いて活躍している方が7名います。ジョブパートナーとして実習生からも信頼を受け、一緒に活動する事を楽しみにしている状態です。とても心強いです。

 実習生とともに働くことで、個々の実習生を知り、何が働く上で障害なのかを見極め、その部分へのサポートをしてもらっています。

 身近な地域のヒロが障がい児・者を理解し、サポーターとなってもらうためにも、毎年続けたい活動です。

E情報交換の場づくり

 会員どうしの情報交換をする場として年3回くらい談話室を開催しています。その時々自分達に必要な情報を得る事を目的にし、時には外部から講師を招いたりして、学習会形式をとることもあります。



5, 運営費

・会員(36名)の会費(年間1000円)と前記活動報酬からあるバイト台、パートナー代を含む運営費を支出



6, 今後の課題

・小さな場所に7つの学校から中学・構成・成人の12名の障がい児が利用していて、そのほとんどが毎週実習を希望しています。今後土曜日毎週学校休みになるので、さらに受け皿としての活動メニューを増やして行くことが必要になってきます。

・コミュにケーションが苦手な軽度の知的障がい者を想定していたのですが、実際にはいろいろなタイプがいて、雑巾の絞り方、ホウキの持ち方かた教えないといけないのでマンツーマン体制が必要になり、パートナーの担い手を拡大していかないと追いつかない状態にあります。ボランティア講座を充実し、多くの市民への参加呼びかけをしていくことが大切な活動となってきます。

・活動をしている実習生の姿を地域の人達に見てもらって障がい児・者を正しく理解してもらいたいので、外に出て行く仕事の種類を増やしていくことが必要だと考えます



7, これからの活動、そして夢

 24年前に障がいを持って生まれた次男の頃の時代は、地域で普通の子供と同じようにと望んでも無理な時代でした。たとえば、長男が通っていた目の前の幼稚園に入りたいと申し込んでもだめと断られました。次男は当時1分もじっとしていない多動児でしたので、自分でも無理だろうなぁと思っていましたが・・・

 でもやっと入れた保育園で、私は次男に大きな発見をしたのです。

 同じ保育園に未熟児網膜症で全く目の見えないユミちゃんが同級生にいて、な、なんと自分のこともおぼつかない次男が何くれとなく、ユミちゃんのお世話をしているのを目撃しました。また、緑公会堂での学芸会のとき、年長発表ではやさし〜く手をひいたり、座らせたり、スカートを直して上げたりと、手ほどきをしていました。この事がチョットした評判になり、私も「なんだかいけるぞ、母ちゃんもガンバル!」と、目からウロコ状態でした。また、訓練でのボランティアさんの一言が今の私になるきっかけともなりました。「だいじょうぶ、いっしょにやろう!」

 それから子どもはこうだと説明したり、理解してもらう掛け合い人生の20年が始まりました。地域でみんなといっしょに学校に行きたいから始まり、特殊学級をつくって、新しい学校にバリヤフリーを取り入れてなど、提案し続け、PTAの役員を引き受けながら協力もしてきました。

 この20年の活動から分かったことは、障がい者福祉、老人福祉もそうですが、地域福祉を進めるには、立場を超えての協力・連帯が必要だと思うのです。学問的、専門的にし過ぎず、みぢかな場所でいろんな人と交流しながら働けるのが最大の福祉です。

 現在ジョブコーチプラス1にいる実習生をサポートしている市民のほとんどは障がい児にいない一般の市民です。私達の会ではジョブパートナーと呼んでいますが、この方々は実習生に対して「働ける子供達」との評価。障害児をひとくくりにしてしまわないで一人ひとりのできること、得手不得手をうまくくみ取ればその子に合った仕事の仕方があることに気づきます。ともに働くことで実習生の真面目さ、素直さに触れ、自分達の方が勉強になると言ってくれます。

 市民を活用して行政とともに知的障がい児の働く場をつくる、増やす、暮らせる、最も困難で遅れている地域福祉をぜひ一緒にすすめてほしいです。具体的には、エネルギーのいるコーデュネイト、場、仕組み、なければつくるくらいの企画力を発揮するトータルコーデュネイター、すなわち自立生活支援センターを早急に設立し、障がい児・者が新リアのできる人たちの支えで生きていける街にしていきましょう